Saturday, 25 March 2023

ブルガリアの薔薇の谷と兵器工場

沈黙の好景気、ブルガリア中部のカザンラック、バラの谷(香水原料としてシャネルが買付けている)としてその名が知れている、ここにブルガリアで最も歴史のある兵器産業Arsenal社の工場があり7000人が働いている。昨年2022年の売上が$4.3 bil.に達し前年比3倍、創業以来最高の売上を記録したが、その製品はウクライナ向け弾薬であり、実に1/3がブルガリアから供給された。その他、ブルガリア最大の兵器産業である国営VMZ(Sopot)はウクライナ向けに155mm砲を製造しているし、Dunarit, Terem, Emko他の軍事産業がウクライナ向けに輸出している。

冷戦時代、ブルガリアはソ連邦ブロック圏のワルシャワ条約機構国、ソ連邦への兵器供給基地であった。ソ連邦崩壊後は産業が極度に衰退し、1996年にはハイパーインフレを経験し深刻な経済危機を経験したが、軍事産業は細々と存続していた。2010年代から中東などの紛争地域でAR-M1というブルガリアのカラシニコフ(ハイコストパフォーマンス)の需要が高まり輸出が増加した。現在、Arsenal社では労働者不足で好条件を提示して雇用を確保している。ブルガリアではそれまで国外へ労働者が流出していたが新たな雇用機会の創出で戻ってきているとも。

EU最貧国の一つであるブルガリアでは首都ソフィア以外では失業率が非常に高く、Arsenal社はブルガリア経済に貢献していることになるが、ブルガリアは歴史的文化的にはオスマン帝国から解放したロシアに近く、ウクライナへの兵器供給はEUとNATOの傘の下ではあるものの複雑な国民感情となっている。

2022年12月の欧州議会でクロアチアは2023年1月よりシェンゲン協定に加盟が承認されたが、ブルガリアとルーマニアは見送られた経緯があり、その点からも国内での雇用機会増大は沈黙の好景気であろうが、これが薔薇などによる好景気であったなら沈黙しないでもよかったであろう。

元記事はAFP。

https://sg.news.yahoo.com/guns-roses-bulgaria-arms-trade-032700960.html

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