Sunday 31 October 2021

東海道三里の渡し(津島湊/佐屋湊-桑名)

津島から川船が出ていたということは子供の頃に天王川川祭りなどから断片的に認識していたが、東海道の七里(宮)の渡しの代替ルートであり、「三里の渡し(津島湊⁻佐屋湊-桑名)」が運航していたことを知ったのはそれから数十年も経ってからだった。これまで振り返る余裕がなかったが、実家へ帰ったときに地元の地名を改めて見直すと日本の歴史の一片を形成していたのかもしれないと思い、全体像を把握すべく少し掘り下げてみた。

津島は古くから津島神社を中心にこの地方の経済文化の中心地であり、津島湊として平安末期には、木曽川の支流である天王川、佐屋川を経て桑名へ連絡されていた。しかし、木曽川(木曽三川の下流部に位置し蛇行、逆流を繰り返していた)のからの土砂流入、堆積により両河川とも水深が浅くなり川船の河川航行が困難となり、寛文6年(1666年)、尾張藩は津島湊を廃止し、延宝7年(1679年)には、津島の本陣を閉鎖した。その結果、渡し船は津島湊から天王川・佐屋川下流の佐屋湊から桑名へとなった。 

津島湊石碑、天王川公園

津島湊跡 

三里の渡しは、佐屋湊の面する佐屋川から木曽川へ入り、鰻江(うなぎえ)川を通って桑名で東海道に合流する3里(12km)の航路であった。宮宿と桑名宿の間の距離は陸路とあわせて計9里となり七里の渡しを使用する場合に比べ遠回りではあったが、河川を通るため海上に出る七里の渡しに比べれば難破の危険や船酔いを避けることができた。また、水上の距離も短かったことから代替ルートとして盛んに利用された。佐屋川(現在は佐屋川用水路になっている)は木曽川下流の支流である。

神守から岩塚・万場で庄内川を渡るが、この辺は認識していないがその先の神守宿は現在の津島市であり、この辺からかつての生活圏に入ってくる。


佐屋驛渡口,『尾張名所図会』巻7海東・海西郡
 
佐屋は陸上交通と海上交通の結節点であり、元和年間(1615年から1624年)に佐屋奉行所が設置され、寛永年間(1624から1645)に佐屋宿が設けられた。記録によると徳川家康が元和元年(1615年)に、徳川秀忠が元和5年(1619年)に上洛の際に通過している。

佐屋宿は、徳川家光が寛永3年、1626年に上洛の折、宿泊施設の御殿を佐屋宿に建てたことがきっかけとなり宿場となった。宿駅設置前にも渡船場であり、寛永11年(1634年)、佐屋宿と万場宿が設置され、元禄14年(1701年)『尾張国絵図』に、桑名と佐屋の水路は「佐屋ヨリ伊勢国桑名への船路三里」と説明されている。  

佐屋街道は1634年(寛永11年)に開設され、1666年(寛文6年)に東海道の脇往還として幕府に公認された。佐屋宿は開設当時からの宿場であり、外佐屋村内佐屋地区、依田村、須賀村の3村が担っていた。天保年間の規模は、本陣1軒、脇本陣2軒、旅籠31軒、問屋場1箇所。佐屋御殿(尾張藩主の休息所)、船番所、船会所、奉行所佐屋代官所、が設置されていた。また、ここから津島神社の参拝道が分岐していた。

1781年、天明元年に尾張藩は海東・海西の109村を治める代官所を佐屋に設けた。


 
江戸時代後期になると木曽川から支流の佐屋川へ流入する土砂の堆積により水深が浅くなり、佐屋湊への川舟の航行に支障をきたすようになった。佐屋湊では幕府の支援を受け川の浚渫なども行ったが土砂の堆積には抗しきれず、半里下流の五ノ三村(弥富市)に出湊として川平湊を開いた。

佐屋川の川底上昇に伴い、明和9年(1772年)佐屋船会所は幕府より貸下げ金を受け川浚いを行ったが効果はなく、文化5年(1808年)、佐屋は渡船場としての機能が果たせず、川下の荷之上村焼田に仮会所を設けられた。

三里の渡しは、佐屋湊から佐屋川、木曽川、加路戸川、鰻江川、揖斐川の順に川を下って桑名宿へ向かう渡船であった。なお、桑名から佐屋へ向かうルートは川を遡ることもあり、船賃は若干高く設定されていたようだ。

佐屋川は江戸末期には上流からの土砂で川幅が狭まり、水深も浅くなり浚渫や仮湊の設置が行われたが、木曽三川下流域の複雑な河道や頻繁に発生する洪水による土砂の流入により維持管理は容易ではなかった。
 
1872年(明治5年)、佐屋街道に代わって新東海道(前ヶ須街道)が定められ、三里の渡しは廃止となった。 なお、渡し舟の通っていた川のうち佐屋川と鰻江川についてはともに木曽川の分流であったが、いずれも明治の木曽三川分流工事に伴って廃川となり現存しない。  

余談だが、佐屋に関連した著名人がいる。24代内閣総理大臣(大正十三年・1924年)となった加藤高明は佐屋の出身、下級藩士服部家で生まれ、加藤家の養子になり、普通選挙法・治安維持法を成立させた。

(ネット上の情報を編集)

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