サワードウブレッド(Sourdough Bread)は、天然酵母(サワー種、またはスターターと呼ばれる)を使用して作られるパンのことです。一般的なパンが市販のドライイーストを用いるのに対し、サワードウブレッドは、小麦粉(またはライ麦粉)と水を混ぜ合わせて自然に存在する酵母菌や乳酸菌を培養して作る「種」を使って発酵させます。
特徴
* 独特の酸味と風味: サワードウの「サワー(sour)」は「酸っぱい」という意味で、このパンの最大の特徴は、ほのかな酸味です。この酸味は、発酵過程で乳酸菌が生成する乳酸によるもので、ツンとした酸っぱさではなく、奥深い、まろやかな旨味として感じられます。また、小麦本来の香ばしさが際立ちます。
* もっちりとした食感: 外皮はパリッと香ばしく、中は水分量が多くもっちり、しっとりとした食感になります。大きな気泡が入っていることも特徴です。
* 長い発酵時間: 天然酵母は市販のイーストに比べて発酵力が穏やかなため、長時間かけてじっくりと発酵させます。この長い発酵時間が、独特の風味と食感を生み出します。
* シンプルな材料: 基本的な材料は、小麦粉、水、塩、そしてサワー種のみと非常にシンプルです。
* 消化の良さ・健康効果:
* 低GI食品: 血糖値の急上昇を抑える効果が期待されています。
* グルテンの分解: 長時間発酵の過程でグルテンが部分的に分解されるため、グルテンに敏感な人でも比較的消化しやすいと言われることがあります。
* 栄養価の高さ: 乳酸菌が豊富で腸内環境を整える効果が期待できるほか、フィチン酸の分解によりミネラルの吸収が良くなるとも言われています。
歴史
サワードウブレッドは、パンの歴史の中でも非常に古くから存在します。市販のイーストが発明される以前は、パンを作る際には空気中の天然酵母や乳酸菌を利用するしかありませんでした。古代エジプト時代から作られていたと言われ、世界中でそれぞれの地域の環境に合ったサワー種が育まれ、様々な種類のサワードウブレッドが作られてきました。
特に有名なのが、アメリカのサンフランシスコ・サワードウブレッドです。19世紀のゴールドラッシュ時代に、金鉱掘りの人々がパンを作るために、現地の空気中に存在する特定の乳酸菌や酵母を利用してサワー種を作り、このパンが広まりました。現在もサンフランシスコには、170年以上継ぎ足しで作られているサワー種を使ったパンを提供している老舗ベーカリーがあります。
作り方
サワードウブレッドを作るには、まず「サワー種(スターター)」を育てることから始まります。小麦粉と水を混ぜ合わせ、毎日「餌やり」と「継ぎ足し」を繰り返すことで、空気中の微生物が定着し、発酵力のある種ができます。このスターターをパン生地に混ぜ込み、時間をかけて発酵させて焼き上げます。
サワードウブレッドは、手間と時間はかかりますが、その分、市販のイーストでは出せない深みのある味わいと香りが楽しめ、近年、健康志向の高まりとともに再注目されています。
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