Wednesday, 20 April 2011

復興財源 ODA削減は再考を (毎日新聞 社説)4月20日

政府・民主党は東日本大震災からの復旧・復興に向けた第1次補正予算案の財源にあてるため、政府開発援助(ODA)を削減する方針だ。

だが、ODAは日本の国際社会での存在感を高めるうえで、極めて重要な手段である。震災後の日本の振る舞いに海外の耳目が集まっている今だからこそ、対外支援は減らさない姿勢を貫くべきではないか。それがこの震災に負けず、これからも平和と繁栄に非軍事面で貢献するという日本のメッセージを、世界に送ることにつながると思う。

軍事国家にならず、貧しい国のインフラ整備や教育、衛生の向上への支援を地道に続けてきた日本のこれまでの歩みは、誇るべきものだ。政治的な理想、政策の魅力で世界への影響力を行使する力を「ソフトパワー」と呼んだハーバード大学のジョセフ・ナイ教授は、日本のソフトパワーの柱にODA大国であることを挙げている。
今回の震災で多くの貧しい途上国が日本に支援をしてくれたのは、日本への「恩返し」という側面もあるだろう。

日本のODAは91年から00年までずっと世界一だった。その後は財政難を理由に減り続け、現在は米英独仏に抜かれて世界第5位に転落している。ピーク時は1兆2000億円近かったが、今年度予算では半額の5700億円だ。この間、日本の国際舞台での影響力は低下し、日本人は国際貢献への関心を失って、内向き志向を強めてきた。

政府・民主党はそのODAをさらに500億円削るという。
確かに、震災で大変な時に対外援助は減らしてもしかたがない、との主張にも一理はある。表だって不平を口にする国はないかもしれない。だが、だから削っても文句はこないと考えたとすれば、視野が狭いと言わざるを得ない。削減を主導した岡田克也民主党幹事長は外相時代、戦略的なODA路線を打ち出していた。
その理念はどこに行ったのか。

04年のインド洋大津波では、日本のODAでつくったモルディブの防波堤が津波被害を食い止めるなど、ODAは日本と途上国の絆のシンボルとなってきた。かつては中国へのODAに批判が集まったが、対中ODAのほとんどを占めてきた円借款は07年度で新規供与を終えている。
無償援助の対象上位国は今、アフガニスタン、スーダン、モザンビークなど、紛争や災害で困窮にあえぐアジア、アフリカ、中東の国だ。

ODAを減らさないことは国際社会に安堵(あんど)感を与え、日本の外交力を強くする。震災という危機で問われているのは、日本はどういう国なのかということだ。長い目で見た国益を、真剣に考えたい。

ソース
http://mainichi.jp/select/opinion/editorial/news/20110420k0000m070161000c.html

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