小学生の夏休みの宿題、今もあるのか定かではないが、自主研究にしてはやや高度かもしれない。目黒通りにある目黒寄生虫館で昭和を反映する寄生虫疾患に関するミヤイリガイの生貝を展示とのこと。ちなみにミヤイリガイは日本住血吸虫の中間宿主として知られる。
昭和時代なら住血吸虫症は耳にしたかも知れない、山梨県や千葉県などが知られている。それ以外だとアフリカや中東地域で見られるビルハルツ住血吸虫症がある。住血吸虫症は農耕生活の広がりによって拡大した感染症であり、灌漑に用いる河川や湖沼に生息する巻貝が中間宿主となって、人には生水を通して住血吸虫が皮膚から感染するので、裸足で水に入らないようにと教わった。
住血吸虫症は基本的には慢性疾患である。住血吸虫が皮膚から侵入したときにかゆみを伴う発疹(セルカリア皮膚炎)がみられる。急性期の症状は、発熱、蕁麻疹、下痢、肝脾腫、せきなどがあるが、目立った症状のない不顕性感染となることも多い。
住血吸虫の保虫者は慢性的な胃や胸の痛み、疲労感、下痢などを訴え、虫卵が膀胱や尿管の粘膜に集まるため尿路に障害が生じる。
エジプトのアスワンハイダム建設(1970)によりダムの完成と周辺への灌漑のため、ナイル川本流の流水量が減り、ダムによりナイル川の流量の多い時期に貯水が行われ、ダム下流の最大流速が落ちたことで、ナイルデルタでビルハルツ住血吸虫の中間宿主である巻貝が大量繁殖し、アスワン・ハイ・ダム完成後、下流域の住民にビルハルツ住血吸虫症の感染が蔓延した。
数週間前にふと見上げて。